琵琶湖は滋賀の大きな余白。何も“ない”という存在が暮らしに彩りを添えてくれる
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琵琶湖は滋賀の大きな余白。何も“ない”という存在が暮らしに彩りを添えてくれる

西は比良山系の山々、東は琵琶湖。山と湖にはさまれた滋賀県西部の湖西エリア。山崎純敬さんは、この湖西をはじめ、滋賀県のさまざまな魅力を発信している写真家です。2013年頃から自らを「シガグラファー」と名乗り、滋賀の住人だからこそ見える景色を写真におさめてきました。また、2019年には「シガーシガ」という団体を仲間とともに設立。滋賀の魅力を発信する活動を広げています。

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映像や写真で滋賀を面白くしたいと「シガグラファー」に

 滋賀県出身で、現在は滋賀県大津市の湖西エリアに住む山崎さん。写真家としての活動のほか、母校の成安造形大学で教壇に立っていますが、教えているのはイラストレーションを学んでいる学生たち。「写真の視点」についての講義を担当しています。

「僕は依頼されて写真を撮るケースが多いのですが、そこでは依頼者の視点や、さまざまな人の視点を、僕なりに解釈することを大事にしています。アート作品であれば自分の視点を入れると思いますが、依頼されて撮る写真は違います。商用ならコマーシャル的な要素があるし、誰かの活動をイメージで具現化するならその人が見ている世界や考え方がある。僕はそれを理解してから撮りたい。被写体を理解してから撮った写真は、そうでない写真とは違いますから」

そんな山崎さんの写真の題材であり、幼いときからの生活の場でもあるのが滋賀です。「シガグラファー」と名乗り、映像や写真を撮り始めたのは2013年ごろ。「名前には滋賀を彩れるような存在にという想いを込めています。自分の作品で、滋賀が面白くなるような活動をしたいんです」

タイミングとしては、フリーペーパーの制作などをしていたデザイン会社を退職し、フリーのフォトグラファーとして独立したときでした。「実際はそれまでとやっていることは同じなんですが、“シガグラファー”の僕が関わることで、滋賀の魅力が少しでも伝わるといいなと思ったのがきっかけでしたね」

琵琶湖は何でも受け止めてくれる大きな“余白”

そこまで滋賀愛にあふれた活動をしている山崎さんにとって「滋賀の魅力は?」との問いには、「20代までは特に何も感じていなかったんですよ。あまり言葉にしようとしたこともなくて」という意外な答え。しかし、この「ない」ことこそが魅力であると気づいたそう。

「考えてみたら、フラットに、みんながいい距離感で琵琶湖のそばにいられることが一番好きなんです。こんなに広いですからね。誰といても圧迫感なく触れ合える。琵琶湖のそばにいると、何者でもない状態でいられる。そういう気持ちになれるんですよ」

 こうしてインタビュー取材を受けるとなれば、やはり撮影場所として琵琶湖岸に足が向く。やはり琵琶湖の存在は大きい。

「琵琶湖の周りを仕事で撮影しながらまわっていると、場所によって天気も違うし、一日のなかでも雨が降ったり、めちゃめちゃ晴れたり。虹もよく出合います。エリアによって住んでいる人の感じも違う。でも真ん中には変わらず琵琶湖がある。みんなで共有している、何でも受け止めてくれるスペース、余白があるというか。これが滋賀ならではの面白いところですよね」

「シガーシガ」の出発点は、好きな湖西にできるだけ長い時間いたい!

写真を撮るときには視点を大事にすると語った山崎さんにいつもあるのは、「滋賀を面白くしたい」という視点。2019年の年末には、活動が大きく進化する出会いがありました。現在「一般社団法人シガーシガ」をともに運営するメンバーたちです。

「滋賀でも、特に住んでいる湖西の魅力を発信する活動、例えば情報誌を作ったりしたいと思っていたものの、なかなかできずにいました。ところが偶然、『シガーシガ』のメンバーと出会って、一緒に活動していこうということになったんです」。そのメンバーとは湖西に拠点を置く、美術家、福祉家、建築家。山崎さんを含めた4人で、滋賀・湖西でローカルが活きる仕組みを作る団体「シガーシガ」を発足します。

山崎さんが編集長として発行した情報誌「REedit north otsu」

「みんな湖西が好きで住んでいるけど、実は家にいる時間はあまりないし、経済的な活動をしているのはほとんど京都などの都市部。暮らしに“余白”はありませんでした。湖西にいる時間を増やしたいなら、小さな経済を湖西に作ることで、ここにいられる時間を増やせるんじゃないかと」

当時は、新型コロナが話題になり始めた頃。シガーシガの立ち上げとほぼ同時にコロナ禍となり、ステイホームが言われる世の中に。しかし時間ができたことも活動を進める要因になりました。「みんな仕事ができず、暇になってしまって。そこでメンバーの一人が運営している福祉施設『蓬莱の家』に隣接する畑をかりて、開墾してシェアファームにしました。そこに人が集まれるように、マルシェイベントを月に1回始めたんです。すでに40回以上開催しています」

「シガーシガ」はあくまでフレームや舞台を用意する役割。主役は“何かをやりたい人たち”だと山崎さんは言います。「自分たちも含めてここで何かをやりたい人たちが、何かできる機会やフレームを作って地域を盛り上げるのが『シガーシガ』のコンセプトです」

忙しいなかに見出す何もない時間を楽しむことも大切

「シガグラファー」として、また、「シガーシガ」のメンバーとして、忙しい毎日を送る山崎さんが考える暮らしの余白とは――? 「そうですね……時間的な余白はあまりないと言ってもいいかもしれないですけど、この状態のまま余白を求めているのも、ある意味いいなって思っています。完全に余白だけになると余白って感じないのかも(笑)。忙しいときがあるからこそ余白が大事だと感じるはず。そう思うと、何も考えない時間とか、何気なく本を読んだりする時間があってもいい。本を読むのが好きなんですが、あまりしっかりした目的を持たず、読むのもいいんじゃないかなと思います」

そして最後には、やっぱり話題は滋賀の良さに。「コロナは、多くの人にとって暮らしや生活そのものを見つめ直す機会になったと思います。住む場所、空間、誰と、どんなふうに過ごすのかを選択するようになった。いろいろな働き方もできるようになった。そのときに滋賀県って今まで何もなかったように見えてたものが、全部あるっていうように見えてきて、この“ない”っていうことはつまり“大きな余白”があること。これは素晴らしいことなんだと思うようになりました」

「シガーシガ」のメンバーと

山崎純敬(写真家)

1977年生まれ。滋賀県出身、滋賀県在住。成安造形大学を卒業後、カメラマンとしてデザイン会社に勤務。2013年に独立。公益社団法人日本写真家協会正会員。大津市北部地域活性化を目的とした一般社団法人「シガーシガ」のメンバー。

山崎 純敬さん公式サイト

インタビューを行ったのは、冬の晴れた日。日差しからささやかな温もりを感じるものの、山から吹きおろす風は冷たく、話しながら座っているベンチもひんやり。だけど「湖岸にいいところがありますよ」と連れて行ってくれたこの場所は、山崎さんのお気に入りのよう。ひょっとしたら取材に来た私たちに見せたい景色だったのかもしれません。毎日、そしてすでに何万回も見ているはずの琵琶湖を、まったく飽きることなく見つめ、その美しさを実感している山崎さん。冬はもちろん、春も、夏も、秋も。暮らせば、暮らすほど好きになって、ついシャッターを切ってしまう。そんな滋賀の魅力が、山崎さんのまなざしから伝わってきました。 

取材・文=瓜生朋美
撮影=畑中勝如

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